第34回櫻井健二郎氏記念賞
(2019年3月1日掲載)


 第34回(2018年度)櫻井健二郎氏記念賞は、受賞題目「高性能量子カスケードレーザの研究開発および実用化」に対し、浜松ホトニクス株式会社の山西 正道氏、枝村 忠孝氏、藤田 和上氏、秋草 直大氏の4名に、また、受賞題目「小型高出力平面導波路型レーザーの開発と風計測ライダーへの応用」に対し、三菱電機株式会社の平野 嘉仁氏、柳澤 隆行氏、山本 修平氏、ア村 武司氏の4名に授与された。




「第34回櫻井健二郎氏記念賞受賞者」
(後列左から)ア村 武司氏、山本 修平氏、柳澤 隆行氏、枝村 忠孝氏、藤田 和上氏、秋草 直大氏
(前列左から)荒川委員長、平野 嘉仁氏、山西 正道氏、小谷副理事長


 櫻井健二郎氏記念賞は、当協会の理事であった故櫻井健二郎氏が光産業の振興に果たした功績を讃えると共に、光産業および技術の振興と啓発を図ることを目的として創設したもので、過去33回で24名の個人、39のグループ、延べ154名が受賞している。
 今年度の櫻井健二郎氏記念賞は、光産業および光技術の分野において先駆的役割を果たした2008年以降の業績を対象に、応募10件の中から厳正に選考された。



第34回(2018年度、平成30年度)



「第34回櫻井健二郎氏記念賞受賞者」
(左から)秋草 直大氏、藤田 和上氏、山西 正道氏、枝村 忠孝氏

受賞者所  属
 山西 正道浜松ホトニクス株式会社 中央研究所 リサーチフェロー
 枝村 忠孝浜松ホトニクス株式会社 中央研究所 材料研究室 副研究室長
 藤田 和上浜松ホトニクス株式会社 中央研究所 材料研究室
 秋草 直大浜松ホトニクス株式会社 レーザ事業推進部 製造部第53部門 主任部員
受賞題名と受賞理由

「高性能量子カスケードレーザの研究開発および実用化」

 受賞者らは、中赤外領域の量子カスケードレーザの開発に取り組み、電子波動関数の精密な計算に基づく間接注入励起や結合二重上位準位構造(DAU)の発案により、極めて高い温度安定性と発光波長の広帯域化を実現し、製品化した。また、単一デバイス内での中赤外2波長発振レーザの共振器内差周波発生により、室温動作テラヘルツ発生を実現するなど、更なる波長域の開拓にも取り組んでいる。
 この量子カスケードレーザの開発・実用化は、ガスセンシングやライフサイエンス分野における計測への幅広い応用とともに、最先端の光科学研究を支える重要な光デバイスであり、今後の光産業の発展に貢献する優れた業績である。



「第34回櫻井健二郎氏記念賞受賞者」
(左から)  ア村 武司氏、柳澤 隆行氏、平野 嘉仁氏、山本 修平氏

受賞者所  属
 平野 嘉仁三菱電機株式会社 半導体・デバイス事業本部 技師長
 柳澤 隆行三菱電機株式会社 情報技術総合研究所 光技術部 主席技師長
 山本 修平三菱電機株式会社 高周波光デバイス製作所 光デバイス部 デバイス第二課 専任
 ア村 武司三菱電機株式会社 通信機製作所 電子デバイス製造第一部 電子管技術課 専任
受賞題名と受賞理由

小型高出力平面導波路型レーザーの開発と風計測ライダーへの応用

 受賞者らは、固体レーザー材料をコアに採用した平面導波路構造により強い光閉じ込めを図るとともに、レーザー光をその平面導波路内で多数回反射させて増幅する独自の小型光増幅・レーザー構造の開発により、高出力化が困難なEr,Yb:ガラス材料での単一モード光出力として平均24W、 ピークで20KWという世界最高出力を実現した。この1.5μmアイセーフ波長帯での高品質・高出力のレーザー・増幅器は、風計測ライダーに適用され、世界最高の観測性能を実現、羽田空港をはじめ、国内外の主要空港へ配備されている。
 これら新構造・高性能のレーザー・増幅器の開発と風計測ライダーへの応用は、航空機運航の安全向上に資するとともに、固体レーザーの利用分野を拡大し、光産業の発展に大きく貢献する優れた業績である。

 上記、8氏(2グループ)に対する表彰式は、2019年2月20日に開催された平成30年度光産業技術シンポジウム終了後に行われた。
 櫻井健二郎氏記念賞委員会、荒川泰彦委員長(東京大学名誉教授)による選考経過報告の後、賞状、記念メダル、副賞が各受賞者に手渡され、引き続き受賞グループを代表して山西氏及び平野氏から謝辞が述べられ、表彰式を終了した。


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