光産業技術マンスリーセミナー

*** 2023プログラム紹介 ***

No.
開催日
講演テーマ / 講師
No.479

4/25
(火)

ペロブスカイト太陽電池:実用化に向けた開発研究の最前線

京都大学 化学研究所 複合基盤化学研究系 分子集合解析研究領域 教授
 (株)エネコートテクノロジーズ 取締役
 若宮 淳志 氏
(内容)
   ABX3型のペロブスカイト半導体を用いた太陽電池が、次世代の太陽電池として注目を集めている。本太陽電池は、材料の溶液の塗布成膜など低温プロセスで作製可能であり、フィルム基板を用いることで、軽量・薄型・フレキシブルな太陽電池を作製することができる。我々はこれまでに、材料化学の視点から、ペロブスカイト太陽電池の高性能化に取り組んできた。2018年には、得られた成果をもとに、大学発ベンチャー(株)エネコートテクノロジーズを設立し、本太陽電池の実用化に向けて開発研究に取り組んでいる。本発表では、我々の研究成果を中心に、ペロブスカイト太陽電池の原理や用いる材料の開発研究について紹介する。
No.480

5/16
(火)

「空間分割多重技術を用いた次世代光ファイバ通信技術の研究開発動向」

株式会社 KDDI総合研究所
先端技術研究所 光部門
 執行役員釣谷 剛宏 氏
(内容)
  マルチコア光ファイバ等を用いた空間多重伝送技術が次世代の光ファイバ及び光ファイバ伝送技術として注目されている。既存のシングルコア光ファイバは、これまで新たな伝送方式にマッチする形で広帯域化や低損失化の観点で進化し実用化されてきた。Beyond 5Gやデジタルツインの実現に向けては、既存ファイバの伝送だけでは容量限界を迎えつつあり、新たな光ファイバ伝送技術の出現が求められている。新たな空間多重技術の適用によりこれまで既存システムの100倍以上に当たるファイバ1心当り毎秒10ペタビットの大容量伝送の可能性を確認している。本講演では、これまでの空間多重伝送技術に関する研究開発を俯瞰しながら、実用化に向けた最新の研究開発動向を紹介するとともにその展望について述べる。
No.481

6/20
(火)

「次世代データセンター向け光スイッチ技術」

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
エレクトロニクス・製造領域 プラットフォームフォトニクス研究センター
光ネットワーク研究チーム
  研究員松本 怜典 氏
(内容)
   光スイッチは電気スイッチよりも飛躍的に高いエネルギー効率を示すことから、光ネットワークやコンピューティング領域などにおいて大容量データの転送経路を高速に切り替える動的再構成の場面で有用であり、電気スイッチの負荷を軽減する重要な技術として期待されている。本セミナーでは、一般的な光スイッチの構成や動作原理を解説し、次世代データセンターに求められる光スイッチの要件を説明する。そして、これまで産総研で開発してきたシリコンフォトニクススイッチの変遷を振り返り、大規模・大容量化に向けた今後の課題や展望を述べると共に、光スイッチネットワークへの適用例を紹介する。
No.482

7/18
(火)

OLEDの過去・現在・そして未来へ

九州大学
 大学院工学研究院 応用化学部門
 主幹教授安達 千波矢 氏
第 38 回櫻井健二郎氏記念賞受賞
(内容)
  OLEDは有機CT相互作用の精密制御により、新分子の創製やデバイス性能の飛躍的な向上が可能となった。30年間の自身の研究を振り返り、OLEDの到達点と現在の課題、さらには有機光エレクトロニクスの今後の方向性について議論したい。
No.483

8/22
(火)

波動散乱逆問題とマイクロ波マンモグラフィ

神戸大学
数理・データサイエンスセンター
 教授木村 建次郎 氏
(内容)
  応用数学史上の未解決問題である波動散乱逆問題の解析解の導出に世界で初めて成功したことにより、従来のX線CTやMRI等の生体内部をみる画像診断技術における基本概念を覆し、散乱波動にて空間内のすべての物体について全点フォーカスできることを数学的に示しました。物体表面での散乱波動の観測結果を境界条件として物体内の散乱場を導き、散乱体の構造を映像化します。本理論、および、既存の乳がん画像診断技術の本質的課題を解決するマイクロ波マンモグラフィについて、その詳細をご説明していただきます。
No.484

9/26
(火)

誘電体メタサーフェスを用いたメタレンズと集積光学素子応用

東京農工大学
大学院工学研究院 先端機械システム部門
  准教授岩見 健太郎 氏
(内容)
   誘電体メタサーフェスは、高い透過率・回折効率を持ち、多様な波面制御を実現できることから期待されている。中でも、メタサーフェスをレンズに応用した“メタレンズ”は、斜入射特性が良好、偏光感度などの従来レンズにない特性を実現できることなどから注目されており、イメージング・測距・構造化照明等に利用されている。本講演では、メタレンズ・メタサーフェスの最新の研究動向と、ホログラフィ・微小集積化光学素子等を含めた講演者らの最新の研究成果について報告する。
No.485

10/24
(火)

「中赤外光および深紫外光を用いたヘルスケアモニタリング」

東北大学
 大学院 医工学研究科 医用光工学研究分野
 教授松浦 祐司 氏
(内容)
   波長6ミクロン以上の中赤外光、および波長300nmの深紫外光というこれまではあまり活用されていなかった極端波長域の光を用いたヘルスケア機器の現状と将来展望について報告する。中赤外光分光法で、タンパク質、脂質、糖質などの分析が可能になるが、この領域では新しい光源や検出器が登場し、小型かつ安価なヘルスケア機器の実現性が高まってきた。また波長300nm以下の深紫外領域は、揮発性ガスが強力な吸収を示すため、LEDなどの光源の開発とともに、新しいアプリケーションの発現が期待されている。本講演では、中赤外分光法に基づく非侵襲血糖値測定や血中コレステロール分析、また真空紫外分光法による呼気中アセトン計測の結果などを報告する。
No.486

11/28
(火)

6G and Beyondの未来を切り拓くテラヘルツシリコンフォトニクスの進展と将来展望

大阪大学
大学院基礎工学研究科 システム創成専攻 電子光科学領域 情報フォトニクスグループ
 准教授冨士田 誠之 氏
(内容)
  電波と光波の境界領域の周波数を有する電磁波、テラヘルツ波の利活用が次世代情報通信システム6Gとその未来(Beyond)に向けて、国内外で大いに注目を集めている。本セミナーでは、テラヘルツ波の未来の利活用を切り拓く高機能なテラヘルツデバイスシステムの創出に向けて、多くの集積電子回路に用いられている半導体材料シリコンを誘電体光回路に展開したシリコンフォトニクス同様に誘電体としてのシリコンに着目し、シリコン微細構造体を用いたテラヘルツデバイスの創成を目指すテラヘルツシリコンフォトニクスの進展と将来展望に関して紹介する。
No.487

12/19
(火)

光ファイバセンシングによる新たなインフラの将来像

鹿島建設株式会社
技術研究所 先端・メカトロニクスグループ
  上席研究員今井 道男 氏
(内容)
   光ファイバに沿ったすべての箇所でひずみや温度の情報が得られる分布型光ファイバセンサを用いて、橋梁やトンネルなどの安全で効率的な施工管理に活用している内容を報告する。ブリルアン散乱光に加えて、レイリー散乱光を用いた高精度で高速な計測技術の進展を契機に、それぞれの散乱光の特長を活かした使い分けが可能となり、様々なインフラ構造物における分布型光ファイバセンサの適用範囲が格段に広がった。また、施工管理時に設置した光ファイバセンサを残置して、効率的な点検作業の補助や迅速なBCPなど維持管理での活用が検討されている。さらに、橋梁に設置された光ファイバでは、ひずみ情報による構造評価だけでなく、振動情報による交通流もわかるなど、インフラセンシングの新たな価値創出が期待できる。
No.488

1/23
(火)

「シリコンフォトニクスを用いた多機能ハイブリッド波長可変レーザ光源」

早稲田大学
 理工学術院 先進理工学部
 教授北 智洋 氏
(内容)
   シリコンフォトニクスハイブリッド波長可変レーザは、シリコンフォトニクスファウンドリーで作製可能な波長フィルタ、光スイッチ、光変調器、Ge光検出器等を効果的に組み合わせた非常に小型なレーザ外部共振器と化合物半導体光増幅器とを結合した構造を持つ。従来の半導体レーザ開発においては、洗練された結晶成長技術と化合物半導体のプロセス技術が不可欠であったが、シリコンフォトニクスを利用することで、ユニークな特性を持つ集積型光源をファブレスで作製することが可能になる。本講演では、通信応用、センシング応用を目的とした高機能ハイブリッド波長可変レーザ光源の研究を紹介する。
No.489

2/20
(火)

光インターコネクションの実装形態と技術動向

古河電気工業株式会社
フォトニクス研究所
 主幹研究員那須 秀行 氏
(内容)
   データセンタインターコネクトの広帯域化と省電力化が求められている。広帯域デバイスの開発が進む一方で、省電力化のためにプラガブル光トランシーバからDSPを排除したLPOが注目されている。抜本的に広帯域化と省電力化を実現するには、光インターコネクションの実装形態を変え、電気伝送距離を最短化できるCPOを導入することが期待されている。CPOにおけるキー部品は小型広帯域光トランシーバである。信頼性の観点から、光源を光トランシーバから離して配置するELSも求められている。本講演では、光インターコネクション実装形態の変遷について解説すると共に、CPO用小型光トランシーバ及びELSについても解説する。
No.490

3/19
(火)

光デバイスの未開拓領域;深紫外LEDとTHz-QCLの最近の進展

国立研究開発法人理化学研究所
平山量子光素子研究室
  主任研究員平山 秀樹 氏
(内容)
   半導体発光デバイス研究の最前線として、短波長深紫外LEDとテラヘルツ量子カスケードレーザー(THz-QCL)の最近の進展と今後の展望についてご紹介する。AlGaN系深紫外LEDに関しては、殺菌用途波長265〜280nmの高出力LEDに続いて、最近は人体に無害でウイルス不活化効果が高い230nm短波長LEDの開発が急ピッチで進められており、高効率化が進み、実用レベル出力を発するLEDパネルも開発されている。THz-QCLの開発では、最近1Wを超える高出力動作を実現したばかりでなく、動作温度230Kでの動作に成功し、常温動作が目前となってきた。現状を踏まえ、応用展開と将来展望について議論したい。
No.491

4/9
(火)

「手のひらサイズの長距離LiDARと点群処理ミドルウェア」

株式会社 東芝
 Nextビジネス開発部 新規事業推進室 LiDAR事業推進プロジェクトチーム
 プロジェクトマネージャー崔 明秀 氏
(内容)
   LiDARは赤外レーザ光を物体に反射させ、戻ってくるまでの時間を計測して距離を測る3Dセンサであり、自動運転システムの"3次元の眼”として期待が寄せられている。東芝では、206ccという世界最小のLiDARを試作し、屋外晴天下において最大300mの距離性能を実現しつつ、水平:1200×垂直:84画素という高解像な3次元データの取得に成功した。本講演では、ソリッドステートLiDARを大幅に小型化しつつ、広範囲かつ高解像な3次元情報を取得可能にする受光デバイスや信号処理を含むハードウェア技術、ならびに、認識AIや雨・霧といった耐環境性などLiDARのユーザビリティを格段に向上させることのできるミドルウェア技術について紹介する。また、ロボティクスやセキュリティなどへの展開についても述べる。
No.492

5/21
(火)

異種機能材料集積に向けた常温・低温接合技術の進展と光・電子デバイスの高度化

東北大学
大学院工学研究科 電子工学専攻
 教授日暮 栄治 氏
(内容)
  半導体デバイスは、これまでのスケーリング則(Mooreの法則)にのっとった微細化の追求(More Moore)に加えて、従来のCMOSデバイスが持ち得なかった、アナログ/RF、受動素子、高電圧パワーデバイス、センサ/アクチュエータ、バイオチップなどの新機能を付加し、デバイスの多機能化、異機能融合の方向に進化する新たな開発軸(More than Moore)を追求するようになってきた。将来の半導体デバイスは、「More Moore」と「More than Moore」を車の両輪のように組み合わせて実現する高付加価値システムへと向かっており、まさに異種材料・異種機能を集積するヘテロジニアス集積(Heterogeneous Integration)技術が、将来の継続的な半導体産業成長の鍵として注目を集めている。特に,ヘテロジニアス集積に向けて,残留応力や熱ダメージの低減という特徴を持つ常温・低温接合技術がキーテクノロジーとなっている。 本セミナーでは、ヘテロジニアス集積を実現する重要な要素技術である常温・低温接合技術に焦点を当て、これらの技術の基礎と評価手法について詳細に述べ、これらの技術により光・電子デバイスにどのような機能や特性が実現できるのか、具体的なデバイスを例に開発動向及び今後の動向を展望する。
OITDA