光産業技術マンスリーセミナー
(2013年3月21日更新)

*** 2012プログラム紹介 ***

No.
開催日
講演テーマ / 講師
No.347

H24年
4/17
(火)

「光MEMS技術の最近の研究開発動向」

 東京大学
先端科学技術研究センター
教授  年吉 洋 氏
(内容)
  光ファイバ通信の発展にともない、MEMS型の光学コンポーネントは エレクトロニクス部品と競争しながら市場に受け入れられるとともに、MEMS型 の製品間での競争も激化した。このため、一部ではMEMS技術がコモディティ化 しつつあるが、これまでに培った技術力を他分野に水平展開することで、MEMS 技術の新たな可能性を模索する動きもある。講演では、医療・非破壊検査用光ファ イバ内視鏡へのMEMS光スキャナ応用や、外部共振器型固体レーザーと組み合わ せたMEMS波長可変光源、画像プロジェクタ等への実用化の取り組みを紹介する。 また、この分野における新たな取り組みとして、印刷技術によるフレキシブル・ フィルム型のMEMSや、テラヘルツ光分野におけるMEMS可変フィルタの研究 動向について報告する。
No.348

5/15
(火)

「メタマテリアルの基礎と応用」

 独立行政法人 理化学研究所
田中メタマテリアル研究室
准主任研究員  田中 拓男 氏
(内容)
  「メタマテリアル」とは、光の波長より小さなナノメートルサイズの素子 を3次元的にホスト材料内に集積化した構造体である、構造を光の波長より小さく設 計するので、メタマテリアルは光にとって均質な物質として振る舞うが、その光学特 性は導入された構造によって人工的に操作できる。そして、構造をうまく設計する と、屈折率が負の値を持つ物質や、光の磁場成分と直接相互作用するような、自然界 には存在しない特異な物質を生み出す事が可能となる。本講演では、可視光で動作す るメタマテリアルについてその動作原理や電磁気学的な特性を述べた後、メタマテリ アルを実現するにあたって最適な材料やその構造について解説する。さらに、メタマ テリアルによって生み出される新奇な光学現象とその応用例を示し、最後にメタマテ リアルを加工技術などの最新の話題を紹介する。
No.349

6/19
(火)

光インターコネクト技術の最新動向

 株式会社日立製作所
中央研究所
通信エレクトロニクス研究部
主任研究員  菅原 俊樹 氏
(内容)
  近年のブロードバンドインターネット技術、スマートフォンの普及をはじ め、企業を中心とするクラウドサービス導入の加速などを背景に、社会全体の情報伝 送量が爆発的に増大している。そして、今後、社会のさまざまな現場で生成される多 量のログデータやコンテンツといったビッグデータの本格的な利活用が進むにつれ て、高度情報インフラシステムの活用分野がさらに拡大し、情報伝送量はますます増 大すると考えられる。
 このような背景の中で、情報インフラシステムやデータセンタを支えるサーバ・ ルータなどの情報処理装置の装置間および装置内のデータ伝送高速化への要求に対 し、旧来の電気配線に比べ、信号の劣化損失が小さく、大容量化・低消費電力化で有 利な光インターコネクトの導入が始まりつつある。本セミナーでは、光インターコネ クトおよび、それを支える光デバイス、モジュール、光配線基板技術などの最新動向 について最新の研究動向を紹介する。
No.350


7/17
(火)

「高効率太陽電池の研究開発動向」

 東京大学
先端科学技術研究センター所長
教授  中野 義昭 氏
(内容)
  東日本大震災以降、再生可能エネルギーへの期待が高まる中で、太陽電池 の技術開発が急がれている。今後、太陽光を人類の主要なエネルギー源として行くた めには、太陽電池の変換効率を可能な限り高める必要がある。このような背景のも と、50%超の変換効率の実現を目指した高効率太陽電池の研究開発が、日米欧で活発 に進められている。中でも最も成熟しているのは、化合物半導体単結晶多接合太陽電 池であり、宇宙用としては既に実用化されている。現在、この高効率を地上で活用す るため、集光技術や薄膜化など、高効率と低コストを両立させる新しい取り組みが行 われている。60%を超える変換効率が予想される中間バンド型太陽電池についても、 研究開発が本格化している。本講演では、50%超の高効率・低コスト太陽電池の研究 開発動向を紹介するとともに、それに立脚する新たな持続可能グローバルエネルギー システムの可能性について言及する。
No.351

8/21
(火)

「痛みの分かる材料・構造を実現する光ファイバ神経網技術」

 東京大学大学院工学系研究科
教授  保立 和夫 氏
(内容)
  光ファイバセンシング分野において、近年、研究・開発の中心と なっている技術に、「分布型光ファイバセンシング」がある。光フ ァイバ中を伝搬する光波は、レーリー、ラマン、ブリルアンといっ た散乱光を発生する。これらの強度や周波数シフト量は、光ファイ バに加わる伸縮歪や温度によって変化する。これら散乱現象を光フ ァイバの位置の関数として捉える技術開拓も進んで、歪みや温度の 「分布」を測定することが可能となっている。一方、光ファイバグ レーティング(Fiber Bragg Grating; FBG)のブラッグ反射波長も、 歪や温度で変化する。長さ約1 mmであるFBG点型センサを光ファイ バに沿って複数配置した「多点型光ファイバセンシング」は実用化 が進んでいる。  持続可能な世界の実現が求められる現在、社会は「使い捨て」か ら「メンテナンス重視」へと舵を切り、また、「安全・安心」が重要 なキーワードとなっている。様々な社会インフラのライフサイクル を延伸し、またこれらの安全を確保する技術開拓が重要となって、 上記の光ファイバセンシング技術が注目されている。本講演では、 ビル、橋、トンネル、ダム、高速道路等の構造物や、航空機の翼や パイプライン等に、光ファイバを貼り巡らせることで、光ファイバ に沿った歪や温度を分布的にセンシングし、これら構造や材料に痛 みを感じる機能を付与して、その診断を可能にする技術、つまり 「光ファイバ神経網技術」につき、最近の進展を紹介する。
No.352

9/18
(火)

フォトニック結晶による発光制御とその応用

 東京大学生産技術研究所
准教授  岩本 敏 氏
(内容)
  フォトニック結晶に代表されるフォトニックナノ構造を用いることで、物質の発 光ダイナミクスや材料からの光取り出し効率、放射パターンなど物質の発光特 性を制御することができる。この特徴を利用することで、極低閾値レーザや高取 り出し効率LED、高速変調LEDなどの従来の発光素子の高性能化が可能となる。 また、フォトニックナノ構造による物質の発光制御は、様々な量子光学現象の基 礎物理研究やデバイス応用においても重要となっている。本セミナーでは、 フォトニック結晶の導入による発光特性の制御について、その物理を紹介すると ともに、レーザなどの発光素子や量子光学的デバイスへの応用について、最近 の研究動向も含めて議論する。
No.353

10/23
(火)

「ナノ材料による新しい光機能の開拓」

 東京大学生産技術研究所
教授  立間 徹 氏
(内容)
  金、銀、銅を3〜100ナノメートル程度のサイズにすると、局在表面プ ラズモン共鳴(LSPR)と呼ばれる現象によって光を吸収・散乱するよう になる。LSPRには、(1)強い光吸収、(2)粒子サイズ・形状等の制 御により、共鳴波長を容易に制御できる、(3)近傍に強い局在電場 (近接場光)を発生し、ナノ領域に集光できる、などの特徴がある。 我々はこの金属ナノ粒子を酸化チタンなどの半導体と組み合わせること で、光誘起電荷分離が起こることを明らかにした。この現象は光電変換 ・光触媒などに応用できるほか、金属ナノ粒子自体の形態変化を光誘起 することが可能なため、当てた光の色に変わり繰り返し画像表示ができ る「多色フォトクロミック材料」、目に見えない(赤外カメラで見える) 画像表示ができる「赤外フォトクロミック材料」、光によって膨潤・収 縮する「光変形ゲル」などへ応用できる。粒子単体でも複数の色を出せ るようになりつつある。また、金属をさらに小さくすると、LSPRは示さ なくなり、かわりに電子の軌道間の遷移に基づく光吸収を示すようにな る。こうした金属クラスターも、半導体と組み合わせることで光誘起電 荷分離が可能であり、やはり光電変換や光触媒に応用できる。その他、 エネルギーを蓄えることで夜間も機能する「エネルギー貯蔵型光触媒」 についても解説する予定である。
No.354

11/20
(火)

「マルチコアファイバ伝送技術の最新動向と今後の展開」

 情報通信研究機構 光ネットワーク研究所
研究マネージャー  淡路 祥成 氏
(内容)
  光ファイバの伝送能力を飛躍的に高める技術として空間分割多重(SDM)が 国内外の学会等で注目を集めている。従来の標準シングルモードファイバ (SSMF)では、単一のコアに単一の横モード(各直交偏波ごとに)を収容 して高速信号伝送を実現していたが、波長数やOSNRの増加要求によって 必要とされる光のパワーは増加の一途を辿り、SSMFでの容量限界が懸念さ れるようになっている。SDMは光ファイバの断面内に複数の空間チャネルを 実現する手法であり、大別して同一クラッドに複数コアを実装したマルチ コアファイバを用いるものと、高次モードを含めた複数の横モードの分離 を可能にする技術によって、光信号の高速性を保ったままマルチモード伝 送が可能な送受信技術を用いるものがある。
  本講演では、未だ萌芽的段階ながらも、マルチコアファイバを用いた伝 送技術への挑戦の事例をご紹介すると共に、マルチモード利用も含めた将 来展望と、実用化に向けた課題について述べたい。
No.355

12/18
(火)

「産業用レーザとその応用技術の現状と将来展望」

 有限会社パラダイムレーザーリサーチ
取締役社長  鷲尾 邦彦 氏
(内容)
  波長1μm帯のYb系ファイバレーザを筆頭に、ディスクレーザ及び半導体 レーザなど産業用レーザの高出力・高輝度化が進展し、ファイバビームデ リバリを用いたキロワットレーザによる金属加工などがこのところ目覚ま しく進展している。また、シングルモードファイバレーザの高出力化も顕 著であり、高速スキャナなどとの組み合わせによる新用途の開発が活発化 している。また、超短パルスレーザも、平均出力100Wを越える製品が数社 から市販されるようになるなど、高出力化が顕著に進展し、これに伴って、 システム化に必要な高速スキャン光学系など周辺光学機器の開発が活発化 している。なかでもドイツでは、超短パルスレーザの産業応用に関する国 家研究開発イニシアティブのもとに、本年初頭から多数の開発プロジェク トが活動を開始している。
  ここでは、最近欧州及び米国で開催されたレーザ加工関連の国際会議 (AKL'12, SLT'12, ICALEO 2012 等)における積層造形、CFRP等難加工性 材料の加工、エネルギーデバイスの加工などのトピックスを交え、産業用 レーザとその応用の現状と将来展望について述べる。
No.356

1/22
(火)

「有機薄膜トランジスタの研究開発動向と
 フレキシブルディスプレイ駆動への応用」

 NHK放送技術研究所 表示・機能素子部
藤崎 好英 氏
(内容)
  有機薄膜トランジスタ(TFT)は、有機材料の持つ柔軟な構造に加え、 プラスチック基板が使用可能な100〜150℃程度の低温プロセスで容易に作 製できることから、フレキシブルディスプレイを始めとした次世代の電子 デバイスの駆動素子として有望である。さらに将来的には半導体や絶縁膜、 電極材料を有機溶剤に溶かして溶液状にすることで、塗布・印刷手法を用 いた低コスト・少エネルギーな作製プロセスを利用できるなど多くの利点 も有している。
  本講演では有機TFTの最近のトピックや研究開発動向について国内外 の報告例を交えて紹介する。また、フレキシブルディスプレイ駆動応用を 目指したアクティブマトリクス駆動用バックプレーンの開発状況やディス プレイの試作結果について、NHKでの取り組みを中心に紹介する。最後 に現状の課題や今後の展望について述べる。
No.357

2/19
(火)

「次世代イーサネットの標準化動向」

 株式会社日立製作所 中央研究所 ネットワークシステム研究部
光野 正志 氏
(内容)
  近年の通信トラフィックの増加に伴い、コア/メトロ/アクセスネット ワークだけでなく、データセンターネットワークにおいても高速化の要求 が大きくなってきている。データ通信において最も普及しているイーサ ネットの規格として、伝送速度が40Gb/sおよび100Gb/sの40Gb/100Gbイーサ ネットが2010年に標準化されている。現在は、第二世代の低コスト・短距 離伝送向けの規格や、バックプレーン伝送向けの規格が策定中である。 さらに、2013年3月には、伝送速度が400Gb/sの400Gbイーサネットの標準化 提案が予定されている。本セミナーでは、これらの技術動向および標準化 動向について紹介する。
No.358

3/19
(火)

「有機EL、LEDを中心とした新世代照明の最新技術動向」

 パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 コア技術開発センター
技監  菰田 卓哉 氏
(内容)
  近年、LEDの特性改善が急速に進み、新世代照明用光源として注目される ようになってきている。しかしながら、LEDは点光源としては優れた可能 性を秘めているが単一のLEDで面光源を得ることは困難であり、複数個の LED を用いるしか現在のところ方法がない。一方、人類初の面発光光源と いうべき有機ELは、有機半導体を用いたLEDであり、OLED(Organic Light Emitting Diode)とも呼ばれる。近年、効率や寿命の改善が進み、新世代 照明光源としてのもうひとつの有力な候補になりつつある。特に、両者と も高効率化による省エネルギー性だけではなく、水銀を用いない、環境に やさしい照明デバイスとして注目を集めている。しかしながら、実用的な 照明という観点からは、たとえば、効率と高品位な照明環境を実現するた めの更なる特性の向上や諸特性のバランスの取れたデバイスの開発が求め られている。このLED と有機EL がさらに発展してくると、従来の白熱灯、 蛍光灯を凌駕した高効率照明が実現できることはもちろん、点光源のLED と面光源の有機ELをうまく使いこなすことにより、これらが織り成す新た な高品位な照明空間実現とそれによる新市場の創出も期待される。このこ とが新世代照明光源に注目が集まるゆえんであろう。
本講演では、新世代照明の要である、LEDと有機EL照明技術の最新技術 動向と将来展望について概説する
OITDA