No. 開催日 |
講演テーマ / 講師 |
No.308
1/20 (火) |
「レーザー光源の眼科治療分野への応用」
株式会社ニデック 研究開発本部
技術開発部兼レーザ研究室
部長 兼 室長 林 健一 氏
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(内容)
人間の眼は可視光から近赤外光を効率良く透過することが出来る。
このため、古くから眼の診断・治療には光が用いられてきた。1960年
にルビーレーザーの発振が成功し、翌年には,網膜剥離に対する光凝
固の光源として使用された。その後も、新しいレーザーが開発される
とすぐにその特性を活かす応用を目指して,多くの研究が行われてき
た。ここでは、眼科治療の代表的な2つの治療分野である角膜屈折矯
正と光凝固について、レーザー光源がどのように使われているかを述
べる。
眼の屈折矯正治療に用いられるパルスのArFエキシマレーザー光源は、
波長が短いので角膜表面での光吸収が大きく、レーザアブレーション
で精密な形状加工が行える。このエキシマレーザー屈折矯正手術装置
の設置台数は現在6,000台を超えているものと推定される。最近では、
この分野に透明体内部の多光子吸収による加工で、フェムト秒レーザー
光源が用いられるようになって来た。
一方で、可視光を眼の中に透過集光させて網膜剥離などの治療に用いる
光凝固装置には、グリーンYAGと称されるNd:YAGレーザー光源の2倍波が
使われている。最近では、Nd:YAGの赤外域での波長を順次切り替え、
第2高調波により、赤(659 nm)、黄(561 nm)、緑(532 nm)色光を得るマ
ルチカラー光凝固装置も市販されている。また、筆者らが開発している
オレンジファイバーレーザーなど次世代光源についても述べる。
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No.309
2/17 (火) |
「Fiber To The Displayのためのフォトニクスポリマー」
慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科
教授 小池康博 氏
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(内容)
シリコンバレーを中心に生まれたインターネットは、皆がネット
につながる新しい情報メディア社会を築いてきた。しかし、それら
は未だ従来のエレクトロニクス技術に大きく依存しており、ダウン
ロードに思いがけないほどの時間を要したり、動きがぎこちなく画
質の粗い動画を多々経験するのが現状である。なぜ、大画面でのコ
ミュニケーションやスムーズなやり取りができないのか。その実現
のためにはディスプレイや端末までギガビットを超える高速伝送を
張り巡らす必要がある。そのキーとなるイノベーションはフォトニ
クスである。
我々は高速の光ファイバーがディスプレイまで直接つながること
により、臨場感あふれる高画質大画面でのFace-to-Face の双方向
の対話を可能とする"Fiber-to-the-Display"というコンセプトを提
案・推進している。人がキーボードの延長の技術に合わせるのでは
なく、技術が人にもどってくる人間調和型のイノベーションが切に
望まれる。その最前線を紹介する。
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No.310
3/17 (火) |
「ここまで来た有機ELディスプレイ」
〜 現状と課題・展望 〜
日本放送協会
NHK放送技術研究所 材料・デバイス 有機フォトニクス材料グループ
リーダー 時任静士 氏
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(内容)
近年、注目されている有機ELディスプレイは、自発光型であるため
視野角依存性がなく視認性に優れる、応答速度が非常に速いため動画
表示に適している、薄膜デバイスであるため非常に薄く軽くできる、
パネル構造が簡単で低コストが期待できると言った点を特徴として挙
げることができる。しかし、最近の液晶ディスプレイの飛躍的な技術
進歩を見ると、有機ELディスプレイの優位性は色再現範囲の広さと
動画対応力の高さであり、大型ディスプレイではさらに薄型、軽量性
がこれに加わると思われる。また、有機ELはこのようなフラットディ
スプレイとしての応用だけでなく、最近では環境問題とも絡み、省電
力で安全な照明機器への応用でも期待されている。しかし、省電力化
の加速に合わせたさらなる高効率化、長寿命化、低コスト化など、い
まだに課題は山積している。各パネルメーカーともその研究開発を諦
めずに続けているのは、やはり、有機ELディスプレイへの期待の大き
さにあると言ってよい。1987年の最初の研究論文では、発光効率がわ
ずか1%、その寿命も初期輝度100cd/m2で50時間ほどであったものが、
現在では、20%を越える効率と初期輝度1000cd/m2で10万時間以上の
寿命が達成できている。1997年の小型モノクロパネルの実用化、2007
年の11インチカラー有機ELテレビの実用化は日本国内で実現したもの
である。さらに10年後の2017年、有機ELはどのような飛躍を遂げて
いるだろうか。楽しみである。
略歴:
1987年九州大学大学院総合理工学研究科博士課程修了、工学博士、同
年同研究科助手。1988年カリフォルニア大学サンタバーバラ校博士研
究員。1990年豊田中央研究所主任研究員を経て、2001年より日本放送
協会(NHK)放送技術研究所主任研究員、現在、同研究所有機フォ
トニクス材料グループリーダー、現在に至る。ならびに、東京理科大
学大学院理学研究科客員教授と東京工業大学大学院総合理工学研究科
連携教授を兼ねる。有機ELおよび有機トランジスタの材料、デバイス
の研究、およびそれらを用いたフレキシブルディスプレイ研究に従事。
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No.311
4/21 (火) |
「光通信デバイスの動向」
〜 石英系PLC、InP系PIC,及びSilicon Photonicsについて
〜
アイディ株式会社 最高技術管理者
NTT R&Dフェロー 岡本勝就 氏
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(内容)
石英系PLC(Planar Lightwave Circuit)やInP系PIC(Photonic
Integrated Circuit) は、その高い導波路作製技術により波長の数十分
の一オーダの光路長制御が可能であり、これを利用した各種の光デバイ
スが既に実現されている。 石英系PLCはハイブリッド光集積技術等に
より一層の高性能化、多様化を達成し長距離伝送用の機能性光部品から
メトロ・アクセス用の低価格汎用光部品まで幅広く用いられている。
InP系のPICはレーザ、増幅器、光変調器や光検出器等を全て一体化出来
るためにファイバ接続が大幅に削減でき、装置の小型化が可能であり今
後益々その集積度を増すものと考えられる。 ただし、現在はまだ個々
の素子の歩留まりが十分に高くないために集積化した後の全体の歩留ま
りが低下するという問題があり、高度な電子技術を駆使してPICの能力
を引き出しているのが現状である。
Silicon Photonicsの最大の利点は、既に確立しているSi産業との融
合により高性能化、高信頼化、および低価格化が比較的容易であると言
う点である。 Si光導波路はコアとクラッドの屈折率差が非常に大きい
ために3〜5μmの半径で光を曲げることが出来る特長を有しており、光回
路の大幅な小型化と超大規模化が期待される。 現状では、データコム
用の4x10Gb/sのActive Cableが製品化されている程度であり、これも既
存のVCSELと多モードファイバを使ったActive Cableとの競争が厳しいものと
考えられる。 また、マルチコアLSIにおけるコア間の光配線を目的と
した光源、光スイッチ、変調器、WDM回路、検出器等の各要素技術は
Intel、IBMを中心にして着実に進展している。
本セミナーでは、これ等の光通信デバイスの現状とその動向について
分かり易く説明する。
略歴:
1949年10月19日生。 1972年東京大学工学部電子工学科卒、1977年同
大学工学系大学院博士課程修了。 工学博士。 1977年日本電信電話公
社(現NTT)に入社、茨城電気通信研究所勤務。
1979年には、分散フラット光ファイバを理論提案し、実際にファイバを
作製して分散フラット特性を実験的に確認した。 1981年には、PANDA光
ファイバ(偏波保持ファイバ)を提案し、解析による構造最適化により
PANDA光ファイバの研究実用化を進めた。 1982年から1年間英国サザン
プトン大学で客員研究員として研究を行い、偏波保持ファイバおよびこ
れを用いたファイバ型偏光子やファイバカプラの研究を行った。また、
1987年から1年間東京大学先端科学技術研究センターにおいて客員助教授
として滞在し、寄付研究講座でBell研究所のMarcatili教授とともに非線
形光ファイバ、および導波型光デバイスの研究を行った。
1990年以降は、PLCの伝搬特性解析.回路設計を行い、N×Nスターカ
プラ、AWG、光Add/Dropマルチプレクサ、導波路型光分散等化器等の
研究開発を行った。
2006年7月より2年間、カリフォルニア大学Davis校の電子工学科教授
として、InPおよびSiを用いた光波回路(PIC : Photonic Integrated
Circuit)の研究を行った。
最近では、AiDi(株)において光導波路を用いたフーリエ変換型の新し
いスペクトロメータの開発を行っており、ウエラブルな小型スペクトロ
メータの実用化を進めている。
電子情報通信学会、IEEEフェロー
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No.312
[受付終了]
5/19 (火) |
「100Gbit/s級高速光伝送技術の最新動向」
株式会社KDDI研究所 光ネットワークアーキテクチャーグループ
グループリーダー 森田逸郎 氏
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(内容)
最近の通信トラフィックの主流となってきている
データ通信では、イーサネットが標準規格として最も普
及している。イーサネット規格としては、これまでに伝
送速度が10Gbit/sの10GbEまでが標準化されており、そ
の次の世代の高速イーサネットとして、伝送速度が
40Gbit/sおよび100Gbit/sの40/100GbEの標準化作業が進
められている。また、イーサネットは最長でも伝送距離が
40kmの短距離向けの規格であるが、100GbEが用いられ始め
ると、100Gbit/s信号を長距離伝送する需要が高まること
が予想されている。その際、従来の延長線上の技術だけで
は、100Gbit/s信号の長距離伝送を実現することが難しく、
現在、光変復調方式を中心に、各種方式の研究開発が盛ん
に行われている。本セミナーでは、2010年中の標準化完了
を目指して進められている40/100GbEの標準化動向について
紹介すると共に、100Gbit/s長距離伝送技術について、その
候補技術をレビューしながら、最新動向を紹介する。
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No.313
6/16 (火) |
「有機EL照明の技術開発動向と将来展望」
パナソニック電工株式会社 先行技術開発研究所
技監 菰田卓哉 氏
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(内容)
昨今、環境問題や地球環境に対する意識の高まりから
より省エネルギー性が高い機器が求められている。照
明の分野でも、エネルギー効率が悪い白熱灯を全廃す
ることが行政からも提唱され、電球の製造を終了し省
エネルギー性の高い電球型蛍光灯に置き換えることが
各電球メーカーからアナウンスされるようになった。
蛍光灯などの放電灯に用いられている水銀は有毒物質
のひとつとされるため、電球型蛍光灯に置き換えが進
んだとしても、その次には水銀をなくすための方策を
考えなければならないが、水銀を使わずに高効率な照
明が出来る商用技術の開発はまだ十分に進んでいない。
近年、発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)
の急速な進展により、新たな高効率照明方式が提案さ
れ始めた。しかし、LEDは点光源としては優れた可能性
を秘めているが、面光源を得ることは現在のところ単一
のLEDでは困難である。そんな中で現れたのが、有機EL
である。有機ELはOLED(Organic Light Emitting Diode)
とも呼ばれる有機半導体を用いたLEDであり、面発光が
比較的容易なデバイスであるために、点光源であるLED
ではカバーしきれない照明分野をカバーできる。基本的
に発光原理はLEDと同じであるため、将来的にはLED並み
の効率が期待できる。
これらにより、将来従来の白熱灯、蛍光灯に代わる
高効率で無水銀な照明光源が実現でき、また、点光源の
LEDと面光源の有機ELをうまく使いこなすことにより、
新たな上質な照明空間実現が期待される。
本講演では、上記次世代照明光源のうち、特に最
近開発が進んでいる有機EL技術とその将来展望につい
て紹介する。
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No.314
7/21 (火) |
「ナノスケール光学:表面プラズモンポラリトン」
筑波大学 数理物質科学研究科 物理学専攻
助教 久保 敦 氏
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(内容)
表面プラズモンポラリトン(SPP)とは、金属表面に沿って伝播する電子疎密波
であり、スリットやグレーティングなどのナノ構造を刻み込んだ金属膜にレー
ザー等の光を照射することで励起される。SPPは光と同様、電磁的エネルギーを
運搬するが、一方、伝播に要する最小ボリュームが回折限界で制限されないとい
う特徴を有する。このため、SPPの波束列を情報伝達の担い手に用いれば小型・
高速の情報処理素子が実現できると考えられており、 “プラズモニクス”と呼ば
れる、表面プラズモンとその工学応用に関する研究分野が近年急速に発展してい
る。SPP導波路、分岐路、変調器、等々“SPPナノ光学素子”の数々が開発されつつ
ある。
ところで、これらナノ光学素子中におけるSPPの伝播の様子を映画のように映
像化できたならば、高性能な素子開発のため極めて有用であろう。我々はフェム
ト秒レーザーによるSPP励起と、光電子顕微鏡による分極分布可視化の技術を組
み合わせ、極めて高い時間・空間分解能(10 fs・50 nm)でSPPの伝播を映像化
することに成功している。本セミナーでは、SPPの物理的基礎の解説、最近のプ
ラズモニクス研究の概観を行い、SPP動画像化の最新の研究についても紹介する。
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No.315
8/18 (火) |
<受付終了>
「大洋横断光海底ケーブルシステムの現状と展望」
日本電気株式会社 ブロードバンドネットワーク事業本部 海洋システム事業部
事業部長代理 青木恭弘 氏
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(内容)
光海底ケーブルシステムは、光ファイバ増幅中継および
波長多重伝送(WDM)技術を適用することにより、1990年前半より飛躍的に
伝送容量および伝送距離が向上してきました。最初の光増幅中継器を用いた
大洋横断光海底ケーブルシステムは、1995年に単一波長の伝送速度5Gbpsにて
商用に供され、その後、2.5GbpsWDMから現在の10GbpsWDMに進展してきました。
そして、この10GbpsWDM光海底ケーブルシステムは、インターネットをはじめと
するデータ通信需要の増大およびサービスの多様化に対応して、太平洋、大西洋、
アジア各地の国際通信インフラストラクチャとして建設され、現在では国際データ
通信の99%以上は海底ケーブルによって行われています。
本講演では、伝送速度10GbpsWDM光海底ケーブルシステムを中心として、既設ケーブル
システムの紹介、システムに用いられている長距離光伝送技術、光伝送装置および
関連する機器などの技術内容を概説します。また、昨今のデータセンターおよび
クラウドコンピューティングなどのグローバルIPネットワーク化に向けた最新市場、
および伝送速度40GbpsWDMあるいは光波長多重分離(OADM)分岐などの次世代
システムに向けた技術動向を考察し、光海底ケーブルシステムの将来について展望します。
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No.316
9/15 (火) |
「半導体レーザの医療診断への応用 ― 周波数領域OCT ―」
北里大学 理学部物理学科
教授 吉國裕三 氏
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(内容)
人体は光に対し不透明であるが、波長帯によっては1cm近くま
で体内に浸透する。OCT(Optical Coherence Tomography)はこれ
を利用して光で人体内部を観測する手段であり、光の干渉を用い
て散乱点までの距離を測り深さ方向の情報を得ている。現在は
網膜を中心に眼科応用が主であるが、内視鏡やカテーテルと組み
合わせ内臓や血管の観測に応用範囲を広げつつある。
電磁波による人体観測は、20MHz程度のラジオ波(MRI)からγ
線(PET)まで広範囲な周波数を用いている。X線は、フォトン
エネルギーが大きいため原子の結合状態には影響されず電子数が
多い重元素のみが検出される。人体では骨だけが検出され、体
内組織の観測には造影剤が不可欠である。OCTは人体との相互作
用が大きい光を用いるのが特徴であり、観測できる深さは1cm程
度に制限されるが空間分解能は10 m以下と高く細胞レベルでの
観測が可能である。従って、従来のX線などを用いる観測とは相
補的であり、共に重要な人体観測手段として用いられると期待さ
れる。
OCTは光の干渉によって深さ方向の情報を得るが、動作原理は時
間領域と周波数領域に大別される。現在主に用いられている時間
領域OCTは、コヒーレンス長が短い広スペクトル光源を用い、参照
鏡と同一深さからの散乱光だけを検出している。周波数領域OCTは
可変波長光源を用い干渉光のスペクトルを測定し、そのフーリエ
変換によって深さ方向の情報を得る。一回の周波数スキャンで深さ
方向の情報が得られ、測定の高速化と感度の大幅な改善が可能であり
注目されている。周波数領域OCTでは高速な波長変化が不可欠で通信
用として開発された波長可変光源の新しい応用分野として注目され
ている。講演では、通信用として開発されたSSG-DBRレーザを中心と
して、半導体波長可変レーザを光源としたOCTの開発動向について解
説する。
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No.317
10/20 (火) |
「固体レーザーとマイクロ固体フォトニクスの展望
−ジャイアントマイクロフォトニクス−」
大学共同利用機関法人自然科学研究機構
分子科学研究所 分子制御レーザー開発研究センター
先端レーザー開発研究部門
准教授 平等拓範 氏
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(内容)
多結晶体透明レーザーセラミックスや周期分極反転強誘電体素
子のように、物質の性質をマイクロメータ(光の波長)オーダー
で制御する事により、その物質の光学特性を強調する、または新
たな機能を発現できる「マイクロ固体フォトニクス」は、光科学
技術の新たな分野を形成しつつある。すなわち、マイクロドメイ
ン構造制御、界面制御などのマイクロ材料加工・制御による光学
機能を活用した高性能固体レーザーは、装置の小型化と同時にビ
ームの空間特性や時間特性制御による高輝度化を広帯域な波長領
域でスペクトルの高純度化と広帯域化(白色化)などのスペクト
ル特性制御も併せ可能とするもので、新たな学術分野の創出に留
まらず機能性レーザー加工や高精度計測、光情報処理、ディスプ
レーからバイオ・医療、環境・エネルギーと幅広い分野での応用
・社会貢献が期待されている。講演では固体レーザーの高性能化
・高出力化を可能とするイッテルビウム(Yb)セラミックスに代
表される新材料によるマイクロチップレーザーと、バルク擬似位
相整合素子による高出力非線形光学波長変換につき焦点を当て、
微細な構造制御によるジャイアントな光の創出、すなわちジャイ
アントマイクロフォトニクスの可能性にも及びたい。
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No.318
11/17 (火) |
「透明酸化物半導体の探索から実現した2つの超伝導物質:
鉄オキシニクタイドとエレクトライド」
東京工業大学 大学院総合理工学研究科 材料物理科学専攻
フロンティア研究センター&応用セラミックス研究所
教授 細野秀雄 氏
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(内容)
当研究グループは、1994年から独自の指針に基づき、透明で電気の流れる物質
を、酸化物系を中心に探索してきた。その結果、透明P型半導体、結晶に匹敵する電子輸送
特性を有する透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)などを見出すことができ、後者は内外
の企業群によって、有機ELや大型LCDの駆動用の薄膜トランジスタとして、実用に向けた研究
が進んでいる。
これらの研究テーマの中で、最も注力してきたのが、石灰(CaO)とアルミナ(Al2O3)から
構成される12CaO・7Al2O3(C12A7)という物質である。この物質は、アルミナセメントの構成
成分として知られていたが、もちろん電気的には絶縁体であった。我々は、この物質の結晶
構造に着目し、細工を施すことで、透明半導体、そして金属伝導を示す状態に転化することに
成功した。そして、金属伝導を示すC12A7を低温に冷やすと、0.2-0.4K で超伝導状態になることを
見出した。すなわち、“Superconducting Cement”が実現したのである。
また、透明P型半導体から派出した磁性半導体の探索に過程で、昨年来大きな話題となっている
鉄(ニッケル)オキシニクタイドの高温超伝導を見出すことができた。
本講演では、上記の2つの超伝導物質の発見に至るまでの経緯と最近の進展について紹介する。
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No.319
12/15 (火) |
<開催時刻変更>15:00〜17:00
「太陽光エネルギーを利用した環境作り −ナノレベルで表面構造制
御された可視光応答型光触媒−」
九州工業大学大学院 工学研究院物質工学研究系 応用化学部門
教授 横野照尚 氏
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(内容)
酸化チタン光触媒は、紫外光照射下で酸化活性と超親水性の表面
特性を発現し、殺菌・防汚・防曇・空気浄化など、さまざまな分野
への製品開発に関する応用研究が活発に進められている。万能に見
える酸化チタン光触媒であるが、次世代の高機能光触媒へ発展を遂
げるためには解決しなければならない重要な問題点が残されている。
その一つとして、酸化チタン光触媒の機能発現には、紫外光照射が
必須であることが挙げられる。そのため室内光や太陽光を光源とす
る際には、わずかにしか含まれない紫外光を最大限に利用する必要
がある。半導体粒子上における光触媒反応は、バンドギャップ以上
の光の吸収により生成した電子と正孔が粒子表面に拡散し、表面に
吸着した分子を酸化あるいは還元することによって進行する。した
がって、一つの光触媒粒子上で酸化反応と還元反応という正反対の
反応がおこり、逆反応が容易に進行するため、反応の効率が激減し
てしまう。この解決策として、酸化と還元の反応場を空間的に分離
することによって、逆反応を抑制することが可能である。
本講演では、ナノレベルで表面構造制御されたルチル・アナター
ス・ブルッカイト型の結晶構造を有する酸化チタン粒子の開発と、
さらに反応サイト選択的な金属イオンとの複合化による可視光応答
化技術に関する研究成果を紹介する。
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