光産業技術マンスリーセミナー
(2017年12月19日更新)

*** 2008プログラム紹介 ***

No.
開催日
講演テーマ / 講師
No.296

1/15
(火)

「光通信用デジタル信号処理技術の現状と展望」

三菱電機株式会社 情報技術総合研究所
光通信技術部 ホトニックネットワークチーム
チームリーダ  水落 隆司 氏
(内容)
 無線通信等で発展してきたデジタル信号処理技術を光通信へ応用する研究が急速に進んでいる。 誤り訂正技術、予等化による分散補償技術、デジタルコヒーレントレシーバ、光OFDM技術などがその代表例である。 従来の光学技術にこれらデジタル信号処理技術を付加することで、光通信にイノベーションをもたらす可能性がある。 従来の光通信で実現し得なかった多値変復調や周波数利用効率の向上、あるいは高分散耐力を実現する技術として期待が高まっている。 本セミナーでは、光通信用デジタル信号処理の基本原理、従来技術との比較、国際会議等の最新研究動向のレビュー、LSI化の課題、 将来展望等について議論する。
No.297

2/19
(火)

「ナノシリコンテクノロジーとその応用」

東京農工大学大学院 工学府 電子情報工学専攻
教授  越田 信義 氏
(内容)
 単結晶シリコンでは、約4 nmのサイズを境として量子閉じ込め効果が顕在化 し、バンドギャップワイドニングが生じる。そのため、光学的・電気的・熱的・ 化学的特性がバルクとは一変し、超LSIの指針であるスケーリングメリットとは 質的に異なるデバイス技術が開かれる。
 本セミナーでは、まず量子サイズナノシリコン(nc-Si)で生じる多様な物理 効果と機能を概観する。それらの応用展開として、発光素子をはじめとするシリ コンフォトニクスの要素技術、弾道電子エミッタ,熱誘起超音波放出素子、バイ オ基材などの研究開発状況を紹介する。これらに基づき、異種の機能をとり入れ た新たなシリコンテクノロジーへの発展可能性を述べる。
No.298

3/18
(火)

「フォトニック結晶の最近の進展」

--- 超高Q値ナノ共振器から青紫色面発光レーザまで ---
京都大学大学院 工学研究科 電子工学専攻
教授  野田 進 氏
(内容)
 フォトニック結晶の最近の進展について説明する。まず、極微小 域に光を強く閉じ込めるナノ共振器の進展について述べる。250万 という驚異的なQ値をもつナノ共振器が実現されたこと、さらにこ のようなナノ共振器のQ値をダイナミックに変化させる方法につい て説明する。これらは、光を光のままで蓄積可能なメモリーや、量 子情報分野にとって重要である。
 一方、フォトニック結晶は、光を大面積で、コントロールするこ とにも有用である。フォトニック結晶のバンド端効果を用いた大面 積面発光レーザについて、最近の青紫色電流注入発振の成功を交え て述べたい。これらは、次々世代光ディスク用光源や、大出力単一 モード光源として期待される。
No.299

4/15
(火)

「最近の超高速光伝送とコヒーレント多値伝送技術」

東北大学 電気通信研究所 超高速光通信研究分野
教授  中沢 正隆 氏
(内容)
 光の特徴はその高速性とコヒーレンシにあり、それらを利用した光通信技術が 古くから研究されてきている。最近では、レーザからフェムト秒の高速パルス が容易に発生させられるようになり、1Tbit/sを越える高速OTDM伝送技術が 追求されている。我々は時間領域光フーリエ変換(OFT)という技術により、 超高速伝送における線形歪みが一括して除去出来ることを提案してきているが、 前半ではこの技術を用いた160 Gbit/s-1,000 km DPSK伝送について述べる。 後半では、光の電磁波としてのコヒーレンシに着目した多値伝送技術、 特に直交振幅変調(QAM)について述べ、光周波数の利用効率が10 bit/s/Hz あたりまで向上できる可能性を示す。
No.300

5/20
(火)

「レーザレーダによる衛星からの環境観測」

宇宙航空研究開発機構 宇宙利用推進本部 GOSATプロジェクトチーム
サブマネージャ 中島 正勝 氏
(内容)
 ライダはこれまでにも種々の観測に用いられてきているが、最近特に衛星軌 道上からの環境観測への応用が注目されており、日本においても研究が各地で 実施されている。 宇宙航空研究開発機構においても、2008年度打上げ予定のGOSAT(温室効果ガス 観測技術衛星)に搭載されるフーリエ干渉計による二酸化炭素観測の校正検証 用に差分吸収ライダの開発を行い、評価を始めたところである。本講演におい ては宇宙航空研究開発機構におけるライダの検討状況や将来構想を中心に、国 内外の研究内容、衛星搭載計画の紹介を行う。
No.301

6/17
(火)

「リアルタイム環境分析法と単一微粒子の履歴解析装置」

東京工業大学 資源化学研究所 分光化学部門
教授 藤井 正明 氏
(内容)
 レーザーを分子に照射すると複数個の光子を吸収して分子が容易 に多光子イオン化する。このときレーザーの波長が分子の吸収帯と 同調すると多量のイオンが生じる(共鳴多光子イオン化; REMPI)。これは従来の分析化学で不可欠であった化学的な分離抽出 を一切不要とする優れた特性である。即ち種々の物質が混在する環 境試料でもレーザーの波長を注目する分子種に同調させるだけでイ オン化・質量分析が出来る。しかもイオン化効率は高く、濃縮は不 要である。これにより、高感度・リアルタイム分析が実現できる。
 講演では原理と焼却炉や自動車からの燃焼ガスのリアルタイム分 析の実例について述べる。さらに収束イオンビームとの組み合わせ により、有機物をナノスケールで分析できる単一微粒子の履歴解析 装置の開発についても論じる。
No.302

7/15
(火)

「ディスプレイ用赤色半導体レーザーを用いた
 ディスプレイ光源の展望」

ソニー株式会社
コアテクノロジー開発本部 アドバンストライトテクノロジー部
統括部長 平田照二 氏
(内容)
 最近,レーザディスプレイが話題となっている。 これはレーザを光源に用いると,原理的に色再 現性,高細密表現,局所高輝度性で最上品質のディスプレイを実現できるためである。本セミナ ーでは,ディスプレイへのレーザ応用に視点を定め,レーザをディスプレイに応用した場合の利 点と課題,光源である半導体レーザに要求される特性と実現技術,具体的なディスプレイ応用例, そして今後の展望について分かりやすく解説する。
No.303

8/26
(火)
8月は第4週火曜日26日開催
「建設分野におけるレーザの研究事例と開発事例」
大成建設株式会社 技術センター 建築技術研究所
建築構工法研究室 材料チーム
副主査 永井 香織 氏
(内容)
  建設分野でのレーザ加工は、コンクリートの切断を中心に 研究が行われていましたが、実用化は、ほとんどなされてい ないのが現状です。過去から、現在まで行われている建設分 野における、研究事例ついて解説します。
 さまざまな建設材料について、表面処理から除染、穿孔ま で、幅広く実験・研究を実施し、実用化に至った床の防滑処 理工法について、着手したきっかけと、開発を推し進めた経 緯を紹介します。
 また、現場でレーザ加工を実施するための大きな問題点と、 今後の展望について、お話しいたします。
No.304

9/16
(火)

「システム側からみた通信方式の動向」

 株式会社日立製作所
   中央研究所 ネットワークシステム研究部
部長 西村信治 氏
(内容)
  情報爆発、地球環境問題と、ICTシステムがとりまく環境が 大きく変化する中、通信方式も大きな変革期に来ている。 特に、NGNが進展してリアルワールドからの莫大な情報が、 通信システムを介してサイバーワールドと繋がるようになり、 様々なICTサービスの創出、普及が進んでいる。その結果、 通信システムに対して、従来からの大容量性に加え、ユビ キタス性、省電力性や運用容易性などが大きな要求事項と なっている。本講演では、100Gbイーサネットを中心とした 有線通信技術、無線通信技術、ネットワーク省電力化技術、 netconfなどの運用性向上技術を例に、次世代の通信シス テム、通信方式の動向を考える。
No.305

10/21
(火)

「ウェブ・ユニバーサルデザイン」

 日本電信電話株式会社
     NTTサイバーソリューション研究所
     ヒューマンインタラクションプロジェクト
     ユニバーサルデザイン担当
研究主任 渡辺昌洋 氏
(内容)
  誰にでも使いやすいデザインという意味のユニバーサルデザインの考え方は、 高齢社会を迎えた日本では重要さを増してきています。 建物や公共空間ではユニバーサルデザインの取り組みが進められています。 ここでは、情報のユニバーサルデザイン、特に、ウェブのユニバーサルデザインについて解説します。 様々なウェブの利用者、様々な利用環境では、ウェブはどのように使われているかを実例を交えながら紹介し、 より多くの人が様々な環境で利用できるウェブデザインはどのようにすれば実現できるのかを解説します。
No.306

11/18
(火)

「東京大学のナノリソグラフィー・ナノ計測サービスと活用事例」

 東京大学大学院
     工学系研究科
准教授 杉山正和 氏
(内容)
  東京大学では、民間に開かれた 「超微細リソグラフィー・ナノ計測拠点」 を開設し、ナノ加工とナノ計測の分野で最先端設備の機器 利用や委託加工・分析サービスを行っている。武田先端知 ビルスーパークリーンルーム(最高クラス1)と可変整形 ビーム式電子線直描装置を用いた高速微細リソグラフィー とナノ加工、原子レベルの解像度を持つ超高分解能透過電 子顕微鏡をはじめとする電子顕微鏡群を駆使したナノ計測 に関して、民間および公的機関の技術者・研究者が大学の 設備を利用したり、大学の支援スタッフが加工や分析を受 託している。2007年の開設以来、従来の半導体デバイスの 枠にとらわれない幅広い業種から利用が集まりつつある。
  本講演では、この共同利用サービスの紹介と、これらの 機器群およびIII-V半導体結晶成長技術を組み合わせた集 積光デバイスの作製例に関して紹介する。
No.307

12/16
(火)

「緑色半導体レーザー実現に向けて現状と展望」

 上智大学 理工学部
機能創造理工学科
教授 岸野克巳 氏
(内容)
  半導体レーザーは青色と赤色域で実用的なレーザーが実現さ れているが、緑色域は未開拓域として残されている。緑色半導 体レーザーへのアプローチとして、いくつかの方向から研究が 進んでいる。
  ひとつは現状の窒化物半導体を用いつつ、波長域の拡大を進 めてゆくもので、非極性・半極性面やナノコラム構造が活用さ れている。ここでは、長波長化によって顕著になってゆく InGaN量子井戸内のIn組成揺らぎ、内部電界および結晶欠陥の 増加をいかに抑制してゆくかが課題である。
  一方、緑色域に適合する新材料開拓も進んでいる。従来と異 なるInP基板上の新しいU-Y族緑色域材料で、格子整合ヘテロ構造と Be添加による格子強度向上によって、LEDとして高い信頼性が実 証されつつあり、レーザー構造への適用が期待される。
  本講演では、これらアプローチについて紹介しつつ、緑色半導 体レーザーの実現に向けての現状と課題、今後の展望について解 説する。


OITDA