光産業技術マンスリーセミナー
(2020年2月10日更新)

*** 2019プログラム紹介 ***

No.
開催日
講演テーマ / 講師
No.431

4/16
(火)

「自動運転用LiDAR向け距離計測SoC技術」

  株式会社東芝 研究開発センター 
ワイヤレスシステムラボラトリー  研究主務
 崔 明秀
 氏
(内容)
    本発表では、安心・安全な自動運転システムを実現するための車載LiDAR向け長距離・高解像距離計測技術について紹介する.簡易な計測対象の認識技術をベースとしたスマートな画素積算技術を用いたLiDARは、200mという長距離且つ高解像な距離計測イメージングが可能となる。試作機を用いた実証実験の結果、水平:240×垂直:96という高解像、10FPSの高フレームレート、且つ、照度70kluxの炎天下で、従来の2倍となる200mの測距が本技術によって可能となることを証明した。
No.432

5/28
(火)

「シリコンフォトニクス集積回路の製造・評価プラットフォーム」

  国立研究開発法人産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 
技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
 堀川 剛
 氏
(内容)
    シリコンフォトニクスは、サブミクロン幅のシリコン配線を光導波路として用いて、高速光信号の生成と検出等の機能を1チップに集積する技術です。電気配線を超えた高速の情報伝送を可能にする技術として、現在研究開発が急速に進められ、実用化が始まっています。また、医療センサや宇宙関連などにも応用が広がっています。本講義では、シリコンフォトニクスの基礎から最近の研究開発動向までを、こうした開発を支えるシリコンフォトニクス集積回路の製造・評価プラットフォームという視点から整理して解説します。
No.433

6/18
(火)

「超伝導量子コンピュータ開発の現状と課題」

  東京大学 先端科学技術研究センター 
中村-宇佐見研究室 特任助教
 杉山 太香典
 氏
(内容)
    量子コンピュータは、量子性というミクロな物理系の性質を積極的に活用して計算を行うデバイスの一種である。既存のコンピュータが苦手な計算問題を効率的に解けることが理論的に証明されている。90年代以降、世界各国で量子コンピュータの研究が行われ、学術的には大きな進展がみられている。一方、社会的または産業的に重要な計算問題を実用的なサイズと精度で解くためには、解決すべき課題が残されている。本講演では、まず量子コンピュータの理論的な基本事項を概説し、次に超伝導量子回路に基づく量子コンピュータの基本事項と開発の現状、実用化に向けて今後解決すべき課題について説明する。
No.434

7/16
(火)

「量子カスケードレーザとその応用」

  浜松ホトニクス株式会社 中央研究所 材料研究室 リサーチフェロー
広島大学 名誉教授
 山西 正道
 氏
(内容)
    量子カスケードレーザ(Quantum Cascade Laser: QCL)は量子井戸構造内のサブバンド間遷移を用いて中赤外〜テラヘルツ(Terahertz: THz)領域で発振が実現されている。この新しい半導体レーザでは、放出するフォトンのエネルギー(波長)はバンドギャップではなく活性層内の量子準位構造(膜厚)を設計することにより決定され、光出力はその活性領域の周期数で増加させることが可能である。本講演では、QCLの特徴的な動作原理(特に狭線幅性、260Hz)とデバイス性能を中心とした開発現況、および、その応用(中赤外域の超高感度分光、医療応用等)について言及する。また、最近の重要な展開である中赤外QCLキャビティ内での差周波発生を用いた室温動作テラヘルツ光源の開発状況を概観する。
No.435

8/20
(火)

「光の偏向を用いた三次元物理場の測定手法」
  株式会社 東芝 研究開発センター
機械・システムラボラトリー 主任研究員
 大野 博司
 氏
(内容)
    空気や水、あるいはガラスなどの透明媒体を対象とし、安価なカメラと照明光を用いて媒体内の三次元物理場(温度、応力、屈折率といった物理量の三次元空間分布)を測定する手法を紹介する。媒体内を光線が通過すると、光線は屈折率分布に応じてわずかに偏向される。そこで、偏向角を測定することにより、屈折率分布を逆計算できる可能性がある。屈折率が求まると、温度と応力といった物理量は屈折率との関係式を用いて算出できる。そこで、まず、解析幾何光学に基づいて偏向角と屈折率分布の関係を導き、次に、偏向角から屈折率分布を逆計算する手法を定式化した。これより、光の偏向角を測定することで三次元物理場を逆計算することが可能になる。
No.436

9/17
(火)

「機械学習を用いた光信号の非線形波形歪み補償技術」
  明治大学 理工学部 電気電子生命学科
専任准教授
 中村 守里也
 氏
(内容)
    SPMやXPMなどの光学非線形現象による波形歪みをディジタル信号処理によって補償することが、光ファイバ通信技術の次の目標の一つと考えられている。Digital back propagationやVolterraフィルタを用いる方法などが検討されてきたが、計算量が大きく実用化への大きな障害とされている。我々の研究グループでは、近年機械学習の分野で注目を集めているニューラルネットワークにより非線形補償を行い、従来方式に比べて計算量が大幅に削減できることを明らかにしてきた。本講演では、Volterraフィルタやサポート・ベクトル・マシン等、他方式と比較しながらその原理と特性、過学習の問題等について整理をし、解説を行う。
No.437

10/15
(火)

「中赤外フェムト秒パルスによる振動分光と分子反応制御」
  東京大学生産技術研究所 基礎系部門
准教授
 芦原 聡
 氏
(内容)
    中赤外波長域は分子の指紋領域と呼ばれるように、この波長域には実に多数の分子振動モードの共鳴線が存在する。中赤外域でのフェムト秒パルスレーザーは、広いスペクトルに加えて、指向性・集光性、短い時間幅、高い尖頭強度という特徴をあわせもつ。これらの特徴から、従来の熱光源ではなし得ない振動分光や物質操作の可能性がもたらされる。本講演では、中赤外フェムト秒パルスによる分子振動の強励起とそれによる結合解離の事例を紹介し、新規な分光計測や化学反応制御・材料加工へ向けた可能性を議論する。
No.438

11/26
(火)

「ライダの仕組みとコヒーレントドップラーライダによる風計測技術」
  三菱電機株式会社 情報技術総合研究所 光技術部
主席技師長
 柳澤 隆行
 氏
(内容)
    ライダ(LiDAR: Light Detection and Ranging)は、遠隔からレーザーを照射し大気の特性やハードターゲットの形状を計測するセンサで、レーダに比べて波長が短いため、小型な装置で高い空間分解能が得られる。また、光は物質との相互作用が強く、幾何学的な反射だけでなく、レイリー散乱、ミー散乱、ラマン散乱等の複数の散乱過程による散乱光や、照射した光を励起光とした蛍光、および大気成分の分子による吸収を計測することが可能である。本講演では、各種ライダの仕組みと、大気中のエアロゾルの微小な反射光を捉えて、そのドップラーシフトから風速を計測するコヒーレントドップラーライダの構成と応用について紹介する。
No.439

12/17
(火)

「光コムと光時計がもたらす精密計測の技術変革」
  横浜国立大学 大学院工学研究院・理工学部
教授
 洪 鋒雷
 氏
(内容)
    超短パルスレーザーを利用した光コムの登場から20年近く時間が経ち、今や光コムは単なるレーザーの周波数を測る道具だけではなく、基礎物理、化学分析、宇宙物理などの研究にとってもたいへん有用な技術となっている。また、光時計に関する研究の飛躍的な発展は、光時計の測定不確かさがセシウム原子時計で制限される事態を招いた。いずれセシウム原子時計に代わってより精度の高い光時計を秒の新しい定義にする予定である。光時計は重力ポテンシャルの高精度センサーとしても応用できる。本講演では、光コムや光時計の発展の歴史を振り返り、その最先端の研究及び技術革新について述べる。
No.440

1/21
(火)

「光で拓く新奇粒子加速 -レーザープラズマ粒子加速の最前線-」
  大阪大学 産業科学研究所 量子ビーム物理研究分野
教授
 細貝 知直
 氏
(内容)
    膨大な資金と立地が必要とされる巨大加速器に対する小型化への要求は高く、従来高周波加速器の1000倍を越える〜100 GV/m(ギガボルト/メートル)もの超高加速電場をレーザーとプラズマとの相互作用で励起するレーザー航跡場電子加速には高エネルギー電子加速器の飛躍的な小型化が期待されている。当初目標のGeV(ギガ電子ボルト)級の加速や準単色ビーム発生の原理実証の成功により加速機構としての高いポテンシャルが既に示され、近年は卓上X線自由電子レーザーの実現を究極目標に掲げたレーザープラズマ加速研究プロジェクトが我が国を始め世界各国で始動している。講演ではレーザープラズマ粒子加速研究の最前線を紹介する。
No.441

2/25
(火)

「光相変化ナノフォトニクスを基盤とする脳型光情報処理」
  慶應義塾大学 理工学部 電子工学科
教授
 斎木 敏治
 氏
(内容)
    書き換え型光ディスクの記録媒体として利用されている相変化材料の新しい応用に関心が集まっている。相変化材料は、結晶相とアモルファス相間の光学的コントラストがきわめて大きく、相間を可逆的、高速かつ閾値的に変化する。これらの特徴はとりわけ、記憶機能と演算機能を必要とする脳型光情報処理技術において有用である。本講演では、相変化材料の基礎、ならびにナノフォトニクス・プラズモニクスへの応用について解説し、全光的メモリー・スイッチング、ニューラルネットワーク、ナノコンピューティングへの展開など最新研究動向を紹介する。
No.442

3/24
(火)

「原発性悪性脳腫瘍に対する光線力学的療法の確立と今後の展望」
  東京医科大学 脳神経外科学教室
教授・医学博士
 秋元 治朗
 氏
(内容)
    膠芽腫は、その周囲脳への浸潤性質、脳の機能局在性などの理由により、手術にての全摘出が不可能である。術後放射線治療や化学療法などの、高度に専門化された医療を施しても、1年生存率62%、5年生存率8%という極めて予後不良の癌腫である。私は腫瘍細胞特異的集積性を持つ光感受性物質と、その励起レーザー光を用いる光線力学的療法にその活路を求めてきた。10年余の基礎、臨床研究の後に、本邦初の複合型医師主導治験を完遂し、世界に類を見ない治療成績を得て、2013年に保険承認を獲得した。本講演では光という武器を持った脳神経外科医が膠芽腫と戦ってきた過去、そして膠芽腫治療への貢献度についての現状、そして今後の展望に言及する。
OITDA
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