光産業技術マンスリーセミナー
(2015年 3月16日更新)

*** 2014プログラム紹介 ***

No.
開催日
講演テーマ / 講師
No.371

4/15
(火)

「超短パルスレーザプロセッシング〜基礎から最近の進展ならびに産業応用まで」

 理化学研究所
専任研究員 杉岡 幸次 氏
(内容)
   ピコ秒レーザやフェムト秒レーザの総称である超短パルスレーザは、その名の通り超短パルス光を発生し かつピーク強度がきわめて高いため、材料加工分野において優れた特性を提供し新たな可能性をもたらした。その結果、 超短パルスレーザプロセッシングは、今日基礎研究から実用的な応用まで幅広く行われている。本講演ではまず超短パルスレーザプロセッシングの メカニズム・特長を説明し、表面加工ならびに内部加工における最近の研究・開発の進展を紹介する。具体的には、表面加工では マイクロマシーニング、マイクロ・ナノ構造化、ナノアブレーション技術を、内部加工では2光子造形、ガラスなどの透明材料の 3次元内部改質・加工技術を解説する。さらに超短パルスレーザプロッセッシングの実用化事例に関しても紹介し、最後に将来展望を述べる。
No.372

5/20
(火)

「GPUを活用したホログラフィックディスプレイとディジタルホログラフィ計測」

 千葉大学 大学院工学研究科
准教授 下馬場 朋禄 氏
(内容)
   ホログラフィは3 次元物体の光波の記録と再生を行うことが出来る技術である。 初期のホログラフィは写真乾板を用いたアナログ的な処理が主流であったが、 近年ではデジタル的にホログラフィを処理することで様々な応用がなされている。 その代表的なものとして、3 次元テレビ(電子ホログラフィ)と3次元カメラ (デジタルホログラフィ)が挙げられる。
電子ホログラフィックディスプレイは、 3 次元物体から発する光波をシミュレート することでホログラムを計算し、そのホログラムから3次元像を再生できることから 注目を集めている。デジタルホログラフィ はCCDカメラなどで撮影対象の3次元物体 のホログラムを撮影し、その撮影したホログラムからの光波伝搬をコンピュータ上 で計算することで、撮影した物体の3次元計測が可能となる。
電子ホログラフィやデジタルホログラフィにおいて、実時間でのホログラム生成や 像再生が求められているが、ソフトウェア/アルゴリズム的な手法と現在の高性能な PC (Personal Computer) を併用しても、実時間処理が困難な状況にある。 本講演では、これらの問題を克服するために近年急速に演算能力を向上させている GPU(Graphic Processing Unit)を用いることで、電子ホログラフィックディス プレイとデジタルホログラフィにおいてボトルネックとなっているホログラフィ 計算の高速化事例について述べる。
No.373

6/17
(火)

「人に優しい3Dディスプレイ技術と映像コミュニケーションへの応用」

 NTTメディアインテリジェンス研究所
主任研究員 高田 英明 氏
(内容)
   3Dディスプレイは、我々が普通に見ている実世界を奥行き方向も含めて表現できるディスプレイであり、高い臨場感を得ることができると期待されている。これまでに、映画館の3Dコンテンツ化による3Dメガネ方式の普及や、家庭用テレビの地上波デジタル化に伴った買い替え需要で3D対応機器が各家庭に広まり始めている。また、将来に向けては、3Dメガネを用いない裸眼3Dを目指した数多くの方式などが提案されてきている。これらの表示方式では、観察者の疲労の問題や装置構成が複雑になること、一般的な画像が表示できないことなど多くの課題があり、将来の実用化に向けてこれを解決すべく精力的に研究開発が行われているところである。
 本講演では、普及しつつある3Dメガネ方式をはじめ、研究開発が進みつつあるメガネなし裸眼3D方式の概要と特徴について紹介し、将来の3Dディスプレイの展望について述べる。また、3Dならではの臨場感や存在感を遠隔地とのリアルタイムコミュニケーションに積極的に応用する取り組みについても紹介する。
No.374

7/15
(火)

「空間多重伝送を実現する光ファイバ技術」

 古河電気工業株式会社 ファイテルフォトニクス研究所
部長 八木 健 氏
(内容)
   情報通信量の飛躍的な拡大要求に応える技術の一つとして、空間多重伝送 (space division multiplexing; SDM)が注目されている。 その空間多重伝送を実現するための光ファイバ技術として、マルチコアファイバとその関連技術の開発が進められている。マルチコアファイバの コンセプト自体は 30 年以上も前に提案されたものであるが、当初はセンサ等の特殊用途が対象となっていた。しかし近年の急速な情報通信量の拡大 による伝送容量不足が懸念される一方で、1本の光ファイバ(コア)で伝送可能な信号量の限界が見えてきたことから、改めて長距離伝送を目的 としたマルチコアファイバが注目されるようになってきた。日本国内では(独)情報通信研究機構(NICT)のプロジェクトを中心に開発が進められて おり、ファイバ断面に占めるコア数の拡大や長距離で伝送に必要な特性の実現など、大きな進展がみられ、開発されたマルチコアファイバを使い ペタビット級の伝送が実現されている。本講では、マルチコアファイバと実用上で課題となる接続などの周辺技術の開発状況を紹介する。
No.375

8/19
(火)

「CIS系薄膜太陽電池技術の現状と将来展望」

 ソーラーフロンティア株式会社 執行役員、技術戦略企画部
部長 櫛屋 勝巳 氏
(内容)
   太陽電池技術は、結晶系Siと薄膜太陽電池技術の二つに大別できる。 薄膜太陽電池技術としての「CIS系薄膜太陽電池技術」は、人工衛星用 電源としての太陽電池の低コスト化技術開発に取り組んでいた米国 Boeing Aerospace社が1980年に小面積セルで変換効率10%を達成し 「結晶系Si太陽電池技術と競合できる技術」と評価されたことで、 米国を中心に研究開発が開始された経緯がある。
 結晶系Si太陽電池技術は、欧州での太陽光発電システム市場の拡大と 共に世界最大の供給力を獲得した中国メーカーが「単結晶Siへのシフト」 をリードしている。彼らは、最高品質の製品を日本市場に投入することで、 品質重視の日本市場においても30%の市場占有率を獲得している。一方、 薄膜太陽電池では、“CIS系とCdTe技術”が、生産・販売実績および研究 開発成果も寄与して、単結晶Si太陽電池技術とも性能面で競合できる技術 であることが認識されつつある。さらに、“CIS系”技術は、1)環境負荷の 少なさ、2)Siを使わないが高性能の達成が可能で製造コスト低減も期待 できること、3)ソーラーフロンティア(株)の1GWプラントでの生産実績 から量産技術となり得ること、などの評価を得て、大きな注目を集めている。 しかしながら、実態は、生産規模が100MW台までのCIS系企業は結晶系Si とのコスト競争力がなく、事業撤退や中国企業に買収されている状況が続いている。 本講演では、CIS系技術の開発の歴史と現状、さらに今後の展望について概説する。
No.376

9/16
(火)

「レーザー・マイクロテクスチュア技術の展開」

 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科
教授 相澤 龍彦 氏
(内容)
   レーザー・マイクロテクスチュア技術は、ピコ秒・フェムト秒レーザーなどのアブレーションのみで微細なパターンを形成する技術としてスタート した。そこには、マイクロ・パターンを形成する1つ1つのユニットセルの 形状精度の確保(1次元レーザー・マイクロテクスチュア技術の加工精度) とともに、ユニットセルの配列精度が大きな技術課題がある。ここでは、 ピコ秒レーザー加工を手段として、種々のセラミック材料を対象として、 この1次元ならびに3次元レーザー・マイクロテクスチュア技術の現状と 今後の課題を明らかにする。その上で、フェムト秒レーザーによる新たな マイクロ・テクスチュア技術を紹介するとともに、これから求められる マイクロ・テクスチュア技術について俯瞰し、次世代の科学・技術における マイクロ・テクスチュア技術の方向性を議論する。
No.377

10/21
(火)

「汎用光電子融合プラットフォームとしてのシリコンフォトニクス」

 NTT先端集積デバイス研究所
特別研究員 山田 浩治 氏
(内容)
   シリコン(Si)電子回路の製造技術を遺伝子に持つSiフォトニクス技術は、 量産性、経済性に優れた超小型高密度光電子融合プラットフォームを提供 する近未来技術である。既に、Siフォトニクス技術により波長フィルタ、 変調器、受光器などの要素デバイスの動作は確認され、これら光デバイスの 高密度モノリシック集積が可能となっている。さらに光源や電子回路との 集積も進展しつつある。当該技術により実現が期待される超小型高密度 光電子融合モジュールは、情報流通システムの経済化と環境負荷の低減に 大きく寄与するであろう。しかしながら、Siの材料特性やSiデバイス製造 技術の現状を考慮すると、これらのメリットはデバイス特性とのトレード オフになっている。そこで本稿では、Siフォトニクス技術の特徴や現在の 到達点の確認を通じ、その長所短所を明らかにし、幅広い応用が可能な 光電子融合プラットフォームとして成就するために必要な技術的課題や 応用方針について議論する。
No.378

11/18
(火)

「車載光ファイバネットワークの現状と動向」

 株式会社 豊田中央研究所 情報・通信研究部
主席研究員 各務 学 氏
(内容)
    自動車の光ファイバワークは2002年に欧州車に採用され、今日では150車種以上に採用されている。情報系、カメラ系など、今後も高速通信が必要とされる車載システムに向けてニーズは高まっており、最も安価な電線や光ファイバを用いた物理層の標準化が急がれている。電線ではUTP(シールド無し撚り線)、光ファイバではSI-MMF(ステップインデックス型マルチモード光ファイバ)への期待が大きい。いずれも、デジタル信号技術を駆使した広帯域化と高信頼性化を目指している。マルチモード光ファイバ中を伝送するモード分布(MPD)の変遷がシステムの不安定要因であったが、近年、MPDを丁寧に計測、管理して、光ファイバの最大NAで規定される帯域以上の高速通信を行おうという動きが出てきている。
 GI-MMFではEF (Encircled Flux)、SI-MMFではEAF (Encircled Angular Flux)というMPD計測の概念が導入されている。本講演では上記の車載ネット ワークの現状、および、代表的なSI-MMFであるPOF(プラスチック光ファイバ)やPCS (Polymer Clad Silica)を用いたデバイス、システムの研究例を紹介する。
No.379

12/16
(火)

「フォトニックネットワーク用光スイッチ技術の最新動向」

 慶應義塾大学 理工学部 電子工学科
教授 津田 裕之 氏
(内容)
   近年のディジタルコヒーレント光通信では、光ファイバの一つのコアで100Tbit/s以上の伝送が可能となり、周波数利用効率も無線通信と遜色がない水準に至っている。そのような背景の下で、光ネットワークのスループットの増大や低消費電力化には光スイッチの活用が不可欠である。
本講演では、まず光ネットワークシステムの構成から光スイッチの性能及び機能に対する要求条件を明らかにする。次に、化合物半導体、誘電体、シリコンあるいは石英をベースとする導波路型光スイッチ、LCOSあるいはMEMSミラーアレイを用いた空間型光スイッチについて、デバイスの構造と動作原理、性能を解説し、光ネットワークへの適用可能性を論じる。また、これらの光スイッチ技術の将来展望と光ネットワーク構成に対する影響を解説する。
No.380

1/20
(火)

「太陽光−化学エネルギー変換を応用した自立型エネルギーマネージメントシステムの可能性 〜現状技術による再生可能水素製造を基にして〜」

 東京大学 総括プロジェクト機構 「太陽光を機軸とした持続可能グローバルエネルギーシステム」総括寄附講座
特任教授 藤井 克司 氏
(内容)
   エネルギーの最も望ましい形態は、利用したいときにそれほど意識せずに すぐに使えることである。自然エネルギーによる電力製造は簡単で高効率な 利用方法であるが、電力貯蔵ができないうえ自然の気まぐれさに左右される ため、望ましい形態とは言えない。これを、より望ましい形態に近づける には「エネルギーの貯蔵」が必須である。
本セミナーでは、このエネルギー貯蔵に着目し、電力を化学エネルギーに 変換し地産地消を行う技術について議論する。また、このエネルギー密度の 低い自然エネルギー利用は、今後ますます分散化・小電力発電化とともに、 総合的なエネルギーの効率化が望まれると考えられるため、この点についても 議論する。
No.381

2/17
(火)

「CO2レーザによるガラス板材の曲線切断と面取り」

 ファインテック株式会社
取締役 羽田センター長 中川 考一 氏
(内容)
   CO2レーザによるガラス板材の切断は、切断面にマイクロ クラックを発生させず、ガラス自体の強度を低下させること のない、またクリーン環境を汚染することのない切断方法です。 ロシアのコンドラチェンコ氏によってその原理が開発されて 以来、その将来性に大きな期待がかかっていました。我々 FOXCONN Groupはこの技術の活用開発に取り組み、曲線切断と 面取り加工技術の開発を行いました。 今回、実際の生産に適用できる段階に至ったと判断いたしま したので、その内容を紹介させていただきます。
No.382

3/17
(火)

「ホログラフィ技術による光情報処理
―大規模データ照合に向けたクラウド型光相関システム― 」

 電気通信大学 先端領域教育研究センター
特任助教 渡邉 恵理子 氏
(内容)
   近年のクラウド型システムの普及は著しく、メールやデータ 保存だけでなく、クラウド上に保存した音楽データに対し、 データベースと照合された音楽データに関して音質改善を 自動的に行うなど、様々なサービスが提供されている。 我々のグループでは膨大な動画データに対して高速照合を 行うことを目的として、ホログラフィック光メモリを用いた 光相関システムの研究開発を行ってきている。さらに通常の デジタルコンピュータと光相関システムを組み合わせてウェブ インターフェイスから光相関システムを利用可能なクラウド型 動画検索システム(著作権管理システム)の研究開発を継続 している。本講演では、光相関システムの現状と課題、および インターネット上の著作権管理システムへの応用について、 経産省における知的財産侵害対策事業での報告事項を交えながら 紹介する。
OITDA